注意すべきこととイレギュラー対応
利用者を自宅へ送迎する必要がある介護施設の場合、特殊な車両を運転することになります。ここでは、高齢者の送迎ならではの注意点や、イレギュラーな事態が発生した場合の対処法について紹介しましょう。
高齢者の送迎ならではの気をつけたいこと
介護施設で利用者の自宅への送迎を行う際には、特殊な機能が備わった福祉車両を使用するのが一般的です。たとえば、車椅子ごと車内に乗り入れできるよう、車両のバックドアにスロープやリフトが備わっています。また、開口部が広めに作られていたり、スロープやリフトが電動式でスイッチ操作で簡単に動かせたり、福祉車両にはさまざまな工夫が凝らされており、介護しやすい機能が備わっていることがほとんどです。
運転する際には、中型や大型のバスでないかぎり、普通自動車第一種免許があれば十分ですが、こうした特殊な機能を備えた福祉車両の特性を知り、安心安全に扱えなければなりません。そして、利用者の降車介助を行う場合は、介護資格が必要です。そのため、送迎業務とはいえど、福祉車両を用いた降車介助を伴う利用者の送迎には、介護資格の保有者が優遇されやすい傾向にあります。福祉車両の操作を熟知しておく必要があるほか、車椅子を乗せたあとの固定を徹底するなど、当然ながら安全にも配慮が必要です。運転時には、高齢者を乗せていることを意識して、急ブレーキや急ハンドルといった危険な運転を避けるのはもちろんのこと、複数人の高齢者を送迎するため時間がかかることを想定して、時間と心にゆとりを持って余裕のある行動をしましょう。
介護施設で利用者を送迎する際は、送迎記録を作成しなければなりません。記載するのは、送迎した利用者の氏名・住所・連絡先のほか、送迎した時間と出発・到着時間、運転者の氏名、車両車種とナンバーなど。送迎記録をつけないと、減算対象となってしまうため、正確な情報をもれなく記載するようにします。
なお、安全に運行するためには運転前に車両の点検をしっかり行い、自身の体調管理も気をつけるようにしてください。
こんなときはどうする?
利用者の送迎を行う際は、イレギュラーなことが発生することもあります。念のため把握しておかないと、突然のことで慌ててしまい、適切な対応ができないかもしれません。そうした事態を回避するためにも、ここではいくつかイレギュラーな事案を紹介したいと思います。
たとえば、利用者の中には駅や病院などへ送迎してほしいと言う方もいます。しかし、利用者は自宅にのみ送迎するというのが原則です。介護施設で登録している自宅以外への場所へ送迎できません。ただし、送迎する先が家族の住む家であったり、日常生活の拠点であったりする場合は、例外です。要は、利用者の状態と送迎先の状況を鑑みて、自宅への送迎が危険と判断されるときは、自宅外への送迎が認められることもあります。
また、家族が不在の場合に利用者を送迎するときは、事前に把握できていれば家の戸締まりを一緒に確認したり、鍵をなくさないように一緒にカバンの中に入れたりして、トラブルを回避できるでしょう。しかし、もともと家族が在宅予定で不在だった場合は、注意が必要です。介護施設の管理者へ電話し、指示をもらいます。たとえば、帰りの送迎時に家族が不在ならば、家族から折り返し電話連絡があるまでは、絶対に利用者をひとりだけ自宅に残して帰ってはいけません。ほかの利用者が同乗している場合は、連絡を待ちつつ、先にその方たちを送迎し、再度、家族が不在だった自宅へ訪問するようにします。
また、朝お迎えに行ったときに玄関に鍵がかかっていた場合は、自宅内で倒れていることも考えられるため、すぐに立ち去らないようにしましょう。必ず介護施設へ連絡し、送迎予定の利用者の氏名や住所などを伝え、詳細を説明し、指示をもらうようにします。こうした少しでも不安に思ったり判断に迷ったりしたときは、施設へ連絡相談し、管理者の判断を仰ぐようにしましょう。